建設業の許可要件とは?
要件というと、一般的には漢字のとおり必要な条件という意味です。しかし、ここで言う要件は法律要件のことで、「一定規模以上の建設業を営むことを許可する」という法律効果をもたらすのに必要な事実ということになります。これを証明していかないと許可はとれないということです。
次のような4つの重要な取得要件があります。
- 経営業務の管理責任者(経管)
- 専任技術者(専技)
- 財産的基礎
- 社会保険
また、その他に3つの取得要件があります。
- 営業所
- 欠格
- 誠実性
それでは個別に見ていきますと、
- 経営業務の管理責任者
建設業の経営のプロがいるかどうかということです。
認められるための条件は、・専属であること、・一定以上の(5年)建設業の経験があることの2つが必要となります。この要件は重要かつ内容が多いので、ここではこれまでとして別記事に詳細をあげます。
- 専任技術者
許可を取りたい業種の技術部門の責任者がいるかどうかということです。
認められるための条件は、・専属であること、・技術的知識があることの2つが必要となります。国家資格があるとか10年の実務経験があるとかです。
この要件も重要な内容が多く、ここではこれまでとして別記事にあげます。
- 財産的基礎
ヒト・モノ・カネのうちの金のところです。一定水準以上のお金をもっているかどうかです。一定水準とは500万円です。証明するには次の2つのうちいずれかが必要です。・直近の決算書の純資産額が500万円以上・銀行の残高証明書で500万円以上であること。
(直近の決算書の純資産額が500万円以上)
税理士さんの作成した直近の決算日の貸借対照表(BS)を使います。表の右下にある「純資産額」の項に500万円以上の金額が書いてあれば要件を満たします。
(銀行の預金残高証明書)
500万円以上の残高があればOKです。銀行窓口で預金残高証明書を発行してもらいましょう。
注意点は有効期限があることです。普通、申請書が受理される1か月以内とされています。
以上が財産的基礎要件の証明方法となります。
- 社会保険
社会保険とは①健康保険②厚生年金保険③雇用保険の3つです。
令和2年の法改正で、加入義務のある事業者は、適切に加入していないと建設業の許可はあげませんというふうに変わっています。つまり必須条件です。
(健康保険)
各事業所さんは、下表の種類4つのうちどれかに加入しています。
法人で認められるのは下3つで、自治体が管轄する国民健康保険は適切とはみとめられません。
個人事業主では、上2つで、協会けんぽと会社健康保険組合は該当しません。
ここでは5人以上雇用する個人事業主となると、法人と同じ判断に変わることに注意が必要です。
適切性 | |||
種類 | 法人 | 個人事業主 | 5人以上雇用する個人事業主 |
自治体が管轄する国民健康保険 | X | 〇 | X |
国民健康保険組合 (土建国保、建設国保) | 〇 | 〇 | 〇 |
全国健康保険協会 (協会けんぽ) | 〇 | X | 〇 |
健康保険組合 (○○会社健康保険組合 | 〇 | X | 〇 |
(厚生年金保険)
厚生年金の考え方は健康保険と全く同じで、個人事業主でも5人以上雇用する事業主は法人と同じ扱いとなります。
厚生年金 | |||
適切性 | |||
種類 | 法人 | 個人事業主 | 5人以上雇用する個人事業主 |
厚生年金 | 〇 | X | 〇 |
(雇用保険)
こちらは法人と個人事業主の区別はありません。
週20時間以上働く労働者がいるかどうかで決まります。いる場合は加入義務があります。
適切性 | ||
種類 | いる | いない |
週20時間以上働く労働者がいるかどうか | 〇 | X |
以上社会保険の加入義務についてでした。
続いて、その他の3要件についてです。
- 営業所
建設業法上、営業所では請負契約を締結することが想定されています。
そのため、顧客を招き入れることができる接客スペースが必要となります。
→つまり事業専用のスペースを有する営業所が必要となります。
*そのため、プライバシーが確保された自社専用のスペースがあるかどうかが大事となります。
よく課題となるのが借りている時、単独で借りている場合は良いのですが、複数の会社で借りている場合です。
・入口は一緒だが、別々に区分されている→OK
・自由に出入りできるコワーキングスペースのような使い方→認められない
仕切り等区分できないと、営業所として認められないことになり、この場合は大きな障害となってしまいます。
その他以下の点が審査されます。
・自宅を営業所とする場合、居住スペースと明確に区分されているか?
・電話番号があるか?固定電話でない場合は事前に審査機関に確認したほうが良い。
・社名の標識を掲げているか?
・事務スペースがある。
・郵便物が届く。
以上事前の確認が必要となります。
- 欠格
過去に悪いことをした事業者には許可を与えないというものです。
対象者は法人である場合においては、役員全員が該当します。個人事業主である場合においては本人です。つまり経営者が対象となります。
逆に言うと、従業員が欠格要件に該当しても許可を受ける点では問題ないということになります。
具体的項目は以下のとおりです。
・自己破産したことはあるか?
・建設業の許可を取り消されたことがあるか?
・建設業の営業停止処分を受けたことがあるか?
・禁固刑、罰金刑、懲役刑を受けたことがあるか?
・未成年者か?
・暴力団と関係があるか?
・精神的な障害があると診断された経験があるか?
以上を、すべての役員さん、個人事業主社長さんに確認しなければならず、気が引けるところですが、とても重要なので丁寧に聞き取ることが必要です。
というのも、許可を受けた後でも、欠格要件に該当していることが判明した場合、許可が取り消されることがあるからです。
- 誠実性
あたりまえなことのようですが、誠実性がないと許可できないということです。
→法人である場合においては、役員全員が該当します。個人である場合においては本人が、請負契約に関し、「不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者」でないことが誠実性要件となります。・・・対象は経営判断する者のみです。
誠実性がないと判断されるのは、請負契約のとき詐欺や横領などの違反行為をすることが明らかな者ということですが、申請書からこう判断するのは難しいと思われます。ある意味この要件は、宣誓的な意味合いで規定されていると考えることができます。
終わり
今回7つの許可要件をあげましたが、ひとつひとつ注意して確認し、もし問題と思われる部分があったら、早めの相談が必要です。