アルツハイマー病をはじめとする認知症については、割と身近な話題として内容を理解している方が多いのではないでしょうか。しかし、このタイトルの後見制度については、良く知られているとは言えず、認知症と何の関係があるのだろうと思われるかもしれません。
65歳以上の人口が21%を超えてくると「超高齢社会」と呼ぶそうですが、既に日本はそうなっており、2030年に向けて後期高齢者が2288万人まで増加するといわれています。特に神奈川県、埼玉県、千葉県等の都市部で高齢化が顕著となる見込みです。また、認知症に罹患する人数は2025年には約700万人となり、65歳以上人口の20%となるという厚労省の推計が出ています。
認知症になると、まず預金を下ろすことができなくなります。また、介護サービスや福祉サービスを利用したくても、本人が契約することが難しくなります。こうした精神上の障害により判断能力に欠ける、あるいは不十分な人(認知症高齢者、知的障害者・精神障害者等)を保護・支援するために援助者を選任して、契約の締結を代わって行ったり、本人が誤った判断に基づいてした行為を取り消したりして、本人を法律的に支援する成年後見制度が整備されました。現行の成年後見制度は民法等の改正により、平成12年4月より施行されました。
昔学生の頃、禁治産者・準禁治産者というのを習った覚えがあります。この制度はあまり利用されなかったようですが、その理由は配偶者がいる場合当然に後見人となってしまうことと、この事実が戸籍に記載されることにより関係者から忌避されたことにあるようです。
成年後見制度には法定後見と任意後見の2種類があります。法定後見は裁判所の手続きによって後見人が選ばれ、後見が開始する制度です。一方、任意後見は保護を利用する人自らが後見人を選任するものです。また、判断能力の点からいうと、法定後見は本人の判断能力が不十分になった後で申し立てするのに対し、任意後見は判断能力が不十分になる前に本人の意思によって決めるものです。この「前か後か」が大きな違いといえます。
法定後見は昔の制度を柔軟に運用できるよう改善されています。判断能力の不十分さの程度により3つの種類があり、重い順に「後見」「補佐」「補助」となります。法定後見の保護を受けるには、家庭裁判所に後見人の選任の申し立てをします。どれに当てはまるか、また、後見人(保佐人・補助人)を誰にするかは、申し立ての理由、医師の診断書、本人との面談を総合的に検討して家庭裁判所が決定します。
任意後見は、本人の判断能力が十分なうちに、将来的に任意後見人になる人との間で、公正証書で任意後見契約を締結するところから始まります。やがて本人の判断能力が低下し、任意後見人の後見事務を監督する「任意後見監督人」が選任されたら、任意後見がスタートします。任意後見を法定後見と比べて、メリットとしてあげられるのは、①頼みたい人に頼める。②頼む内容や報酬をあらかじめ決められる③判断力の低下前から死後事務まで頼める等の点です。デメリットとしては①監督人が選任されると監督人の報酬が発生すること②法定後見にあるような本人の行為に対する同意権・取消権がないこと等があげられます。それぞれに長所・短所があり、本人の事情に応じてもっと詳細に詰めなければいけないのでしょうが、特に頼みたい人や内容をあらかじめ決められる点で、事前に研究しておく価値があるのではと思います。